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「大丈夫」と伝える時の心構え

カウンセラーの日常

これは、私が看護師だった頃の話。

一通り自立して業務ができるようになった頃、両足が動かなくなった患者さんがリハビリのために入院してきました。予後は「おそらく自分の足では歩けない」でした。

その方をAさんとします。

Aさんはお子さんも小さい若い方でした。私はAさんに苦手意識を持っていました。なぜなら、部屋に伺うとどう扱ったらいいか分からない感情をぶつけられるからです。

私は、Aさんになんと声をかけたらいいか分からず、他の人と同じように挨拶をし、やらなきゃいけない医療処置や日常生活のお手伝いだけを失敗しないように手短に済ませ、何か言われたらできることだけ対応し、また挨拶をして去っていく日々を過ごしていました。

Aさんがそういう言動を取らざるを得ないのは足のことが理由というのは分かってて、だから、Aさんに「私の気持ちが分かるのか」と言われるのがとても怖かったのです。私には分からなし、それ以上何もできないからです。

Aさんのメインの担当の先輩(聖母)に、「『私の気持ちが分かるのか』と言われたら何もできなくなるから、どう接していいか分からない」と聞きました。

そうしたら、「Aさんねー。まぁ、しょうがないよねー今は。でも大丈夫でしょ」とサラッと返されてしまいました。

続けて、「Aさんはこれから長い人生を生きていかなきゃいけないから、私は、そのために必要な情報を伝えてる」と言っていました。

つ、強い。

そして、Aさんの態度はその後も変わらぬまま、車イスでご退院されていきました。

なんとなく消化不良のまま一年半程が過ぎた頃、偶然Aさんと再会しました。

Aさんはニコニコしながら、「あー!お久しぶりです!これから外来なんです」と話してくれたので、私は、「お元気そうで嬉しいです」と伝えました。なんだか拍子抜けしました。

先輩(聖母)にそのことを話しました。

「あー、多分ね、抜けたんでしょう」

はて。なんのことでしょう。

「一山越えたんだよきっと」

へえ。そうなんだ。

「ゆいかちゃんはあれでよかったんだよ。言い返したりしなければいいんだよ。必要以上に関わらないということも大事」

先輩(聖母)は私を励ましてくれました。

「でも、私、本当は自分が怖かっただけで……」

「まあいいんじゃない?今回はいい勉強なったね。よかったね」

それからは、なるべく患者さんのありのままの姿を受け入れようと意識しましたが、つらそうな姿を見るたびに、私の中では「この人の場合でも本当にそれでいいのかな」という迷いを持ったのでした。

ある時、急にそのモヤモヤがなくなる時がきました。

「もう空の星になりたい」と毎日悲しみにもがいていた時に、ネットの海から、師匠の「今はそのままでいい」、「大丈夫」、「感情は天気と一緒、晴れる時はくる」という言葉を見つけて随分心が救われたのでした。

それまで、「大丈夫」は適当な軽々しい言葉だと思っていたので好きではなかったのですが、信頼と愛のこもった「大丈夫」はずっしり響いて、心の真ん中にちゃんといてくれて、どんな理屈よりも勇気をもらいました。

あの時、私がAさんに何かアクションを起こしたら、「私の気持ちが分かるのか」と言われることを怖れた私の想像は現実になったのでしょうか。

なったかもしれないし、ならなかったかもしれません。でも、本当はどっちでもよかったんだと思います。

ただ、その時はそういう時で、Aさんには必要なことで、私が出来ることは、先輩(聖母)みたいにAさんがWHOの定義する所謂”健康”に自分の力でなれることを信頼することだったんだろうなぁと思いました。

※ 健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態

日本WHO協会より

相手が苦しい状況を乗り越えられると信頼することで、初めてその人のありのままの姿を受容できるんだなぁと思いました。先輩(聖母)には、入院してきた時からAさんの本来の姿が見えていたのかもしれません。

Aさんを通して見た私の怖れは、何もできない現実を知りたくないとか、傷つきたくないという自分のエゴで、それゆえにAさんと向き合わなくていいように逃げる言い訳だったんだろうなぁ。

どんなに頑張っても、自分に出来ることは限られています。だから、私は、先輩(聖母)や師匠みたいに、人が健康で幸せになれることを信じてやまない一人でいられるように、自分と向き合っていきたいなぁと思うのです。

「今はそれで大丈夫」

「うまくいく方法はいくらでもある」

「今出来ることはたくさんある」

「一人では無理でも、一緒に考えてくれる人はいる」

「だから大丈夫」

今、この言葉が必要な誰かに届きますように。

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